2022.11.16(水)
昨日までの二日間、主催「上天草市社会福祉協議会」・協力「危機管理防災課」により行われた災害ボランティア養成講座「地域の『受援力』を高めよう!」を見学し、取材した龍ヶ岳・松島両会場には平日にもかかわらず多くの方が参加されていて、皆さんが「防災」や「ボランティア」に強い関心を持たれていることが改めてよく分かった機会になりました。
“改めて”と言えば、初日の14日(月)に見学した大道老人福祉センターでは、市社協のスタッフさんたちの後方に「合津地区社会福祉協議会」の会長さんがいらっしゃいまして、「あらま、松島で都合が付かず龍ヶ岳まで受講に来らしたのか~😲」と思いきや、「今日は“本業”で来ました😊」と仰られ、市の危機管理防災課にお勤めされているのを今更ながら知った次第・・・この日は、本講座で講師を務められる「防災管理専門員」としての臨場でありました😅
では、一昨日(14日)に龍ヶ岳の大道老人福祉センターで行われた講座初日の午後の部の様子から。
市社協のT矢さんの進行により講座が開講し、まずは「地域の受援力を高めよう!」と題して同じくO田氏が講座の導入を担います。
この「受援力」という言葉に私は今回初めて触れましたが、簡単に言えば『助けて!と言える力』だそうです。
有志が災害ボランティアを考えたとしても「求めていること」を発信してもらわないと実状が見えませんし、また、到着しても現地の声に拠らないと動きが取れませんから、もちろん災害ボランティアセンターが機能しその統制のもとに稼働するのが効果的ではありますが、「〇〇できる人に加勢してもらえんか~!」とか「〇〇で困ってる人がおったけん、優先してくれんか~!」と声を上げることが、人の「助けたい」「何とかしたい」という気持ちを引き出す“引き金”になり、被災地の早期復興につながる、というワケなんですね。
「受援力」と「災害ボランティア」について学んだあとは、市の危機管理防災課の防災管理専門員さんから「防災について」の講義です。
地震があっても少し揺れる程度だし、有明と不知火に挟まれているとはいえ地形的に津波の心配もほとんど無い上天草ですが、今から50年前の1972年(昭和47年)に起こった「7.6水害(上天草大水害)」では甚大な被害を被り、龍ヶ岳や姫戸、教良木などに立つ慰霊碑や災害復旧記念碑がその被害の凄まじさを伝えるところですが、「今まで大丈夫だったから、これからも大丈夫」と高を括らず、まずは自分のことは自分で行う「自助」、そして、向こう三軒両隣に始まり自主防災組織や小地域ネットワークなどの「共助」で相互に支え合うことが「地域の防災力」を高めることに繋がる、とのことです。
「自主防災組織」について質問されたのは、姫戸から駆け付けた「NPO法人おかげさまで」(「故郷コンビニ『よらんかな』」)の代表者さん。伺えば、仕事がありこの日の午前中に行われた姫戸会場(老人福祉センター)に参加できなかったから、とのことでしたが、興味だとしても必要性だとしても、こうして口座に集まる皆さんのその向学心には心底尊敬するばかりです。
さて、お次は「クロスロード」という防災対応カードゲームを行いますが、これは、阪神・淡路大震災で神戸市議員が実際に直面した「災害対応のジレンマ」をカードゲーム化したものだそうです。
災害時の対応というものは、優先順位を付け難いものや、即座に決心しなければならないこと、時には、ジレンマに陥ることが決して少なくないというワケで、このカードゲーム「クロスロード」は、生起した事案に対し文字どおり「岐路」や「分かれ道」の選択をし、何故その選択をしたのか全員で紹介し合って進めるのですが、ここで大切なのが「相手の意見を否定しない。」、そして、「人の話は最後まで聞く。」という点
進行のT矢さんが、何度も「人の話は最後まで聞く。」を強調するのにはきっと理由があるんでしょうね・・・楽しみです(笑)
各グループごとジャンケンで最初に問題文を読む方が決まったら、読み手の方はカードの上から順に読み上げ、「〇〇だったらYes」「●●だったらNo」と全員の決心を促します。
読み手を含め全員で“瞬発的”に「Yes」か「No」を決めたら、そのカードを裏返しにして出し、一斉にカードをオープン。その意見にした理由を順番に発表し、設問について話し合いを行う、という流れを時計回りに進めるワケです。
多数意見には「青座布団」カード、1人だけ違う意見の場合には「金座布団」カードが配られますが、残念ながら何枚集めても「おもちゃのカンヅメ」や「プロ野球カードアルバム」は貰えません。
「そりゃ~究極の選択だわぁ~😅」という難問に翻弄されつつも、災害対応を自らの問題として能動的に考えることができ、かつ、自分とは異なる意見や価値観の存在への気づきも得ることができるため、防災対応カードゲーム「クロスロード」は非常に有意義ではなかったかと思いました。
続いて、講座二日目、松島のアロマ(松島総合センター)で行われた昨日(15日)の様子を。
市社協の職員さんから「受援力」と「災害ボランティア活動」について導入があり、その後、市の危機管理防災課にご勤務されている防災管理専門員さんから「防災について」の講義・・・と言っても、受講者のほとんどは顔馴染みで、更に、先輩諸兄や災害ボランティアとして被災地で活動を共にした仲間が並んでいるということで多少の遣り難さもありそうでしたが、お話の中で特に印象的だったのは「自己完結」を本分とする災害ボランティアに「準備万端!」と臨んだものの不十分だった点も多かった、ということで、これは「経験したから分かること」、「経験しないと分からないこと」でありますので、是非とも後進へのアドバイスを重ねていただきたいと思います。
ということで、防災対応カードゲーム「クロスロード」の時間ですので、まずはジャンケンで順番を決めましょう✊✌✋
自己紹介の後は、手札に記された「立場」と「問題文」を読み上げ、各人ごとその設問に対して「Yes」か「No」かを決心します。
この日は、地域おこし協力隊のY溝さんも見学に駆け付けられました。
先ごろ「SUNABACO天草プログラミングスクール」を卒業された彼女は、学びの中で「知識が増えると世の中の解像度が上がる」ことを実感されたそうですが、こうして地域で行われている活動に触れることで更に「上天草の解像度」が上がっていくと思いますので、楽しみいっぱいですね🎊
この日も「う”っっっ」と声も出ない難問に暫し腕を組んで思案したり、天井を見上げて「・・・こりゃ~究極の選択だなぁ~💦」とすぐに「Yes」か「No」を決心できない場面が見受けられ、皆さんは葛藤に葛藤を重ねていたようです。
例えば、サンプルで掲示された「3000人いる避難所で、2000食を確保した。この食糧を配るか配らないか」という問題について、講師の方からは「全員に渡らないという理由で配らずに腐らせてしまった。」という例や、「子供や高齢者を優先して配布した。」という例が示され、大切なのは「Yes」か「No」を「選択した理由と処方」であることが改めてよく分かりました。
もうひとつ、「究極」として例えるのは、災害対応に当たる立場でいながら、安否の分からない家族を後に回して任務へと向かうことの是非
「強い責任感をもって専心職務の遂行にあたり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務める」と服務の宣誓を行って国防に任ずる人たちは、一番近くにいる守るべき人を置き去りにしてでもこの国の平和と独立を守っていること、そして、消防や警察ばかりでなく、消防団や自主防災組織の一員である方々も「強い責任感」を胸に職務に邁進しているのは周知のとおりであります。
「東日本大震災」(2011年(平成23年)3月11日発災)では「消防団の法被(はっぴ)を着ている自分は、避難者を追い越して逃げることは出来なかった。」と現地最前線で消防活動を指揮し続けた分団長がいる一方、消防団員253人(岩手県が119人、宮城県が107人、福島県が27人/総務省消防庁調べ。)が犠牲者になっています。また、自身が消防団の活動に出場している間に、家族を亡くした方々も多いと聞きます。
これらのことからも、まずは「自分のことは自分で」、そして近隣住民での「互助」を厚くして、災害弱者は元より避難誘導や災害対応に当たる方々に哀しい犠牲が出ないように地域の全員で心掛けなければならないと痛感いたします。
講座の締め括りに、市社協地域福祉課の課長さんからご挨拶に併せ12月4日(日)に行われる「災害ボランティアセンター運営協力員養成講座」の案内がありました。
災害支援に興味のある方や実働してみたい方は勿論、どんなことをするの?という方も是非ご参加を!との紹介でしたが「先着50名、お土産あり!」ってことらしいですから、区長便で回覧されるのを見つけたら即申し込みをいたしましょう💨
さて、我々日本人は「自分で何とかしよう」と頑張り過ぎてしまう性分が強く、また、他に加勢を求めることへの「罪悪感」や「ラクをしてる」と指弾されることへの恐れが更に助長させているという指摘もありますが、そんな僅かな我慢や妥協を溜め込んでしまうと「自分で何とかしよう」というエネルギーすら奪われてしまいます。その一方で、「誰かの役に立ちたい!」というエネルギーを持っていても、発揮する場所が無い(知らない)人がいるのも事実です。
そんな、困難に直面した人が「加勢して!」と言い、役に立ちたい人が手を差し伸べることが出来れば・・・それは「災害」に限らず、「ゴミ出し」や「草刈り」などもっと身近なことにも当てはまるでしょうし、それらが円滑になればもっと安心で住みよい地域になって行くのでは、と考えながら「受援力」について拝聴し、また「選択の多様性」について幾つもの学びをさせていただきました。
事前調整もせずに見学(取材)させていただきましたが、市社協の皆さん、そして、講師を務められた危機管理課の防災管理専門員さんにはご理解ご協力いただきましてありがとうございました。